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労働実務Q&Aこれで解決!

雇用保険の適用拡大

Q.

 厚生労働省によると、60歳以上の常用労働者数は、2016年6月時点で324万5千人(従業員31人以上規模企業)。長寿化に加え、公的年金の先細りへの懸念などから右肩上がりで増えているそうです。国は高齢労働者の就労を支援するため、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」あるいは「継続雇用制度の導入」などの措置を講じるよう企業に義務づけています。今年からは、法改正により65歳以上の労働者も雇用保険に加入できるようになったそうですね。

A.

 従来の雇用保険法では、65歳に達する前から同じ会社で働き続ける人についてのみ雇用保険の加入を認め、65歳以降新たに雇用された人については雇用保険の適用対象から除外されていました。65歳以降に転職した人は雇用保険の加入が認められていなかったのです。しかし、雇用者数、求職者数が増加傾向にある65歳以上の高齢者の雇用を一層推進するため、雇用保険法が改正され、平成29年1月1日施行、65歳以上の労働者にも適用が拡大されます。


◆雇用保険法改正のポイント

 今回の雇用保険法の大幅改正は、元気でいる限りずっと働きたいと願っている高齢者や、高齢者を有効に活用したいと考えている企業にとって有利となることが多く、熱いエールを送る内容になっています。
①適用対象の拡大 平成29年1月1日以降、65歳以上の労働者についても「高年齢被保険者」として雇用保険の適用の対象になります。加入時の年齢制限が撤廃されたのです。
②高年齢求職者給付金 65歳以上の労働者が離職し失業の認定を受けると、高年齢求職者給付金という一時金が支給されます。被保険者期間が1年以上の場合、基本手当日額(離職前6カ月の賃金総額を180で割った額の50~80%)の50日分。被保険者期間が1年未満の場合、基本手当日額の30日分。従来は1回限りでしたが、改正後は回数制限がなくなり、受給要件を満たすごとに支給されます。
③受給要件 64歳までは原則として「離職前2年間に被保険者期間が通算して12ヵ月以上ある」ことが必要ですが、65歳以降は「離職前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上」となり、期間条件が2分の1に縮少。
④介護休業給付金 65歳以上の高年齢被保険者についても、育児・介護休業給付の支給対象となります。老老介護と呼ばれている社会現象が生じていることを踏まえると、高齢者にとって介護休業や介護休業給付金は万一のときの助けになると期待されます。
⑤教育訓練給付金 平成29年1月1日以降に厚生労働大臣が指定する教育訓練を開始する場合、65歳以上で雇用保険の加入者でも、一定条件をクリアすれば利用可能です。
⑥保険料免除 今後、免除制度は廃止される予定ですが、平成31年度までは経過措置により免除されます。当面はコスト負担ナシです。
⑦年金調整 一時金は非課税。この一時金と老齢厚生年金の併給調整はなく、働くシニアには朗報です。


◆雇用保険法改正に伴う事務手続

  平成29年1月1日以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合だけでなく、平成28年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合も、一定の要件に該当するかぎり、適用対象者になり、加入手続きをしなければなりません。
 雇用保険の適用要件とは、 1週間の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがあることをいいます。
 適用要件に該当するかどうかの判断は、平成29年1月1日時点で判断。要件に該当すれば雇用保険の被保険者資格の取得日は平成29年1月1日です。資格取得届の手続きについては、経過措置が設けられ、平成29年3月31日までとなっています。
 改正法施行前からの65歳以上の「高年齢継続被保険者」は、法改正により自動的に「高年齢被保険者」に切り替わり、資格取得届等の手続きは必要ありません。

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