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労働実務Q&Aこれで解決!

新入社員と法令遵守

Q.

 絶えることのない企業不祥事。かつては経営トップの犯罪が問題視されてきましたが、現在では末端の社員が起こした不正行為が企業の屋台骨を揺るがす事態も起きています。刑事責任や民事責任が法廷を舞台に争われると、マスコミにもスキャンダラスに報道されます。企業ブランドの崩壊は、最悪の場合経営危機さえ招きかねません。当社では、4月に多くの新入社員を迎い入れる予定です。法令遵守について新入社員向けに一言アドバイスをお願いします。

A.

 社会人にとって業種を問わず大切になってくるのが「コンプライアンス」です。
コンプライアンスは法令遵守と直訳されることが多いですが、それだけではありません。就業規則、職場のマナーや倫理も含め、広く社内外のルールを守って行動することを言います。会社のルールは学校のルールとはレベルが違います。軽はずみの行動は自分が処分を受けるだけでなく、会社の信用を失墜させ、ときには組織崩壊へつながっていくことを多くの前例から学習すべきでしょう。


◆就業規則の遵守一服務規律と懲戒

 職場のルールの基本となるのが就業規則。勤務時間や休日・休暇といった働き方や賃金などのほか、社員が守るべき服務規律が定めてあり、これに違反すると懲戒処分を受けます。懲戒処分には、減給、出勤停止、降格などのほか、最も重い処分として懲戒解雇があります。
 社員として採用された人が、学歴・職歴・犯罪歴などの経歴を偽っていた場合、「経歴詐称」に該当。学歴詐称の事案については、懲戒解雇を有効とした判例もあります(炭研精工事件 最判平3・9・19)。
 無断欠勤、出勤不良、勤務成績不良、遅刻過多、職場離脱などの「勤怠不良」は、重大な債務不履行ですが、著しい勤怠不良が続くと、さすが裁判所も解雇を有効としています。
 会社の時間外労働命令や休日労働命令、配転命令に従わなかったときはどうなるか。「業務命令違反」として正当な解雇理由になります。
 会社のパソコン、タブレット、携帯電話等の「私的利用の禁止」を掲げる企業は多く、公私混同は避けましょう。業務で使用するパソコン等のモニタリング規定を設け、サーバー内の情報を閲覧できるとしている企業もあるので、ごまかすことは不可能です。
 会社によっては寛容なケースもありますが、「無許可兼業」すなわち会社の許可を受けずに他社で雇用されることを禁止する企業は今でも少なくありません。


◆法令遵守一刑事罰と民事賠償

 法令違反による法律上の責任とは、法律にもとづいて制裁や不利益を負わされることをいいます。ペナルティーの種別から、主として刑事上の責任と民事上の責任に区分できます。
 会社物品の私用は、職場規律の観点から懲戒事由としている企業が多いですが、法律に抵触する場合もあります。会社の備品であるボールペンの持ち帰りや出張費・経費の水増精算は、刑法上の横領罪(252条)もしくは詐欺罪(246条)に該当、立派な刑法犯です。
 インターネットで見つけた他人の文章や画像を社内資料として流用することは、法的に問題ないでしょうか。著作権法上「私的使用のための複製」(30条)は、著作権者の許可を得ることなく著作物を利用できます。しかし、企業内の活動はすべて営利目的。私的使用とはいえず、適法ではありません。
 営業秘密の漏えいは、不正競争防止法改正により罰則が強化されました。ウイルス感染に気づかず自宅のパソコンで仕事をした際、顧客リストや契約書、新製品情報などの営業秘密が漏えいする恐れがあります。SNSなどの交流サイトの発言・投稿も要注意です。
 社員が故意または過失により会社に損害を与えた場合、会社に対し、債務不履行または不法行為による損害賠償責任が生じます(民法415条、709条)。会社から懲戒処分を受けたり、国から刑罰を受けても、この責任を免れることはできません。これが私法の一般原則なのです。

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