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労働実務Q&Aこれで解決!

新入社員の定着促進策

Q.

 入社して3年も経たないうちに離職してしまう若年者が多く、新規大卒者の早期離職率は恒常的に30%を越えるとのこと。最近のある機関の調査によると、離職理由で上位にきたのが、「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」(男34%、女33%)、「肉体的・精神的健康を損ねた」(男29%、女34%)、「人間関係が良くなかった」(男27%、女29%)という回答。新入社員に早期離職を意識させる要因を探り、定着を促す方策を知りたいのですが・・・・・・・・・。

A.

 労働時間は意外でした。入社前に想像していたより長く働かなければならない現実が、離職を促しているようです。常態化した長時間労働の疲弊から生活を見直すため、故郷へUターンする事例もあるとか。若年者の定着や意欲を高めるためには、若者の就業意識の変化を踏まえた対応が求められます。ただし、会社が常に楽しく仕事ができ、自分の能力の発揮・向上ができる場ではなく、不条理性や非合理性を含む人々の集合であることを受容することも大切です。


 早期離職を想起させる要因(知りたいのは本音の部分ですが)や定着促進策には様々なものがあるでしょうが、ここでは、時期的に当面する新入社員研修と労働時間の削減、メンター制度やフォローアップ研修について触れてみます。


◆新入社員研修の目的と内容

 新入社員研修の目的は、学生から社会人への意識改革。会社や仕事を理解し、社会人としての基本的スキルを習得すること。早期離職の背景には、仕事や業務内容に関する事前の理解不足、人事制度運用にあたっての誤解などが想定でき、ミスマッチをなくすために、集合教育が欠かせません。その内容とは。
 その1は、各自で働くことの意義を考え、仕事観を確立してもらうこと。生活の糧を得るために働くということは大前提。ですが、仕事を通して「世のため、人のために尽くす」という利他の心にもとづく仕事観を身につけてほしいものです。仕事によって心が練磨され、人間性も高めることができるということも知ってほしい。
 その2は、経営トップ自ら、自社の経営理念や経営哲学を語ってもらう。経営者は、会社の目的、組織の価値観を鮮明に掲げ、全社員の心のベクトルを揃える役割を担っています。新入社員が心から共感できる大義名分を示し、働きがいや生きがいを提供する義務と責任があるのです。明確な経営ビジョンは、新入社員の先行きの不安を払拭させることができます。
 その3は、人事制度、わけても評価制度の仕組みとルールを丁寧に説明すること。評価と昇給や賞与などの処遇がどのような形で連結しているのかをよく理解してもらう必要があります。人事制度への理解不足や誤解が原因で離職する例が意外と多いのです。
 その4は、就業規則や労働法令に関する知識の付与。厚労省の「事業主等指針」(平27厚労省告示406号)にも、労働法制に関する基礎的な内容の周知を図ることが望ましいとされています。


◆残業時間の削減と過重労働の防止

 入社直後に、新入社員がメンタル面を含めて不調になるケースが増えています。広告大手の電通で起きた2度めの過労自殺の社会的インパクトは立法と行政、司法を動かしました。長時間労働などの過重労働は、脳・心臓疾患を発症させるリスクが高く、メンタル面にも悪影響を及ぼします。残業を許可制ではなく、「上司の命令がなければ残業はできない」という命令制にすることも一考の余地あり。経営トップのリーダーシップが問われる局面です。


◆メンター制度とフォローアップ研修

 メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員が、後輩社員に対して行う個別支援活動をいいます。OJTを通じて若手社員の心理面のケアを行い、離職率の低下につなげることができます(先輩社員が最も成長します)。
 新入社員が入社して半年が経つた頃フォローアップ研修を実施。仕事の面で壁にぶつかる時期に、不安定な立ち上がりをうまく制御できるヒントを伝授するのです。

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