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労働実務Q&Aこれで解決!

カスハラ対策の法制化

Q.

 2023年の厚労省「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、労働者が勤務先でパワハラ、セクハラ、カスハラを受けた割合は、それぞれ19.3%、6.3%、10.8%であるとか。カスハラはセクハラを上回っている状況です。同年には、労災認定基準が改正され、原因項目にカスハラが追加されました。2024年には、東京都をはじめとした地方自治体で、カスハラ防止条例が成立。このような動向を踏まえ、国会でカスハラ対策の法制化がされたそうですね。

A.

 2025年6月4日、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を事業主に義務づける法律(労働施策総合推進法の一部改正)が、国会で可決・成立しました。改正法は、事業主に、カスハラにより労働者の就業環境が害されることがないよう、雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。改正法の施行は、公布日(2025年6月11日)から起算して1年6ヵ月を超えない範囲内とされています。企業規模にかかわらず、すべての事業主が対象。企業は対策を怠ることができません。

◆カスタマーハラスメントとは

 カスタマーハラスメントの定義について、改正労働施策総合推進法では、つぎのように規定しています。すなわち、「事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者…の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの…により当該労働者の就業環境が害されること」(33条)。
 厚労省の従来の見解と比べてみると、「職場において行われる」という場所の限定を課していることが注目されます。
 また、顧客等の言動が一定の要求を実現するためという目的がない場合であっても、ハラスメントに該当することもあります。手段・方法についても、大声や激しい表現を用いる場合に限られているわけではありません。


◆カスタマーハラスメントの防止対策

 事業主が講ずべき具体的な措置の内容は、今後、厚労省により指針において示される予定です。これまでのハラスメントの措置義務の内容に順じて、次の点を指摘できます。

  1. 事業主の基本方針。基本姿勢の明確化と従業員への周知。啓発。
  2. 従業員の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応。事実関係を迅速かつ正確に把握し、被害者に対する配慮の措置、行為者に対する適正な対応、再発防止措置等を講ずることです。
  4. 社内対応ルールの従業員への教育・研修。顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの社内における具体的な対応について、従業員を教育することです。
  5. 相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知すること。

◆カスタマーハラスメントの法的責任

 まず、加害者本人の刑事責任。職場におけるカスハラは、個人の身体、名誉や人格権の侵害です。暴行、傷害、脅迫、名誉棄損、侮辱罪等の刑法犯に該当することがあります。
 加害者本人の民事責任はどうか。カスハラ行為によって被害者に損害が生じた場合、不法行為にもとづく損害賠償請求(民法709条)が可能です。加害者が会社の社員であれば、当該会社は使用者責任を追及される(民法715条)おそれもあります。
 被害者の事業主が、十分なカスハラ対策を行わなかった場合。使用者は、労働者に対し、労働契約の内容として安全配慮義務があります(労働契約法5条)。よって、「職場環境整備(配慮)義務」違反による債務不履行責任(民法415条)として損害賠償請求をされることも。上司や管理職が適切な対応をしなかった場合、不法行為責任(民法709条)や使用者責任(民法715条)の追及も可能です。

 

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