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労働実務Q&Aこれで解決!

労災保険の適用労働者

Q.

労災保険の保険給付額や休業補償は、健康保険と比較して高額で保障水準も高くなっています。また財源の大部分は使用者が負担し、労働者の負担はありません。このように労働者保護に手厚い労災保険の適用の仕組みはどうなっていますか。労災保険の対象となる人は「働いて生活をたてている人」全般をいうのですか。請負や委託契約者はどうなりますか。

A.

労災保険は、他の社会保険と異なり、事業所ぐるみで適用し、その適用を受ける個々の労働者を捉えていません。したがって、労働者個々人について資格の得喪手続は不用です。1人でも労働者を使用する事業は労災保険の適用となり、そこで使用される「労働者」が労災保険の対象者です。労働者に該当するかどうかは、契約の種類ではなく、実態で判断されます。


◆労働者の概念

 労災保険法の保護対象者は、いうまでもなく「労働者」です(第1条)。ただし、労災保険法には労働者の定義規定がないため、労基法9条の規定から判断せざるを得ません。労災保険法が労基法の災害補償に対応した保険制度として創設された経緯からいっても無理からぬところです。
 さて労基法9条は、労働者について、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義づけています。労働契約法にもほぼ同様の定めがあります(2条1項)。ここで「使用される者」とは、他人の指揮命令にしたがって労務を提供する者であり、いわゆる「使用従属関係」にあることをいいます。ですから、労働者であるか否かの実際的指標は、事業主との間に「使用従属関係」があり、かつ「賃金を支払われる者」といえるかどうか、にあるのです。


◆労働者の具体的範囲

① アルバイト、パートタイマー
 労働者の雇用形態を問いませんので、常勤労働者に限らず、派遣社員、臨時労働者、日雇労働者、アルバイト、パートタイマーなど、いずれも正真正銘の労働者です。 
② 法人の役員
 法人の取締役、理事は、一般に使用者であり、労働者ではありません。ただし、重役などで、代表権を持たない者が、工場長、部長などとして賃金を受ける場合(使用人兼務取締役)には、その限りにおいて労働者です(昭和23.3.17基発第461号)。
③ 自営業者、中小事業主、同居の親族
 自営業者や中小事業主は事業主であり、労働者ではありません。これらの人は、労災保険法の「特別加入」制度を利用することにより、労災保険の適用を受けることができます。
 事業主の同居の親族は、原則として労働者とはなりません。ただし、同居の親族以外の労働者を常時使用する事業において、業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であり、就労の実態や賃金が他の労働者と同様である場合には、労働者として取り扱われます(昭54.4.2基発第153号)。
④ 業務請負契約、業務委託契約
 事業主との間で「業務請負契約」や「業務委託契約」を結ぶ場合があります。一人親方の大工や特定の企業の業務に専従的に従事する車持込み運転手などがそれです。労働者性が否定されれば、個人事業主ということになります。
 このような場合、「労働者」に当るか否かは請負や委任という法形式ではなく、その実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価できるかどうかによって判断されます。最高裁は、一人親方の大工の事例(最判平19.6.28)や車持込み運転手の事例(最判平8.11.28)について、「労働者」には該当しないと判断しました。一方、厚生労働省は、一定の条件を満たすバイク便の配達者について、労働者性を認める通達を出しています(平19.9.27基発第0927004号)。

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