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労働実務Q&Aこれで解決!

アメーバ経営と人材育成

Q.

 京セラと第二電電(現KDDI)を創業し、日本航空では会社更生法の適用から2年で営業利益2000億円というV字回復をやってのけた稲盛和夫氏。「心をベースとする」経営哲学と、それにもとづく「アメーバ経営」といわれる経営管理手法が日本航空再建の切り札となった、とビジネス誌が賛辞していました。稲盛氏が会社を創業し成長させる過程で編み出したアメーバ経営という管理システム。その最大の効果が人材育成にあるそうですね。

A.

 経営者である稲盛さんは、創業当初、技術開発から製造や営業、会社の管理まで様々な仕事に携わっていました。当時、自分と同じくらいに責任を感じて手伝ってくれて、自分の経営を分担してくれる部下が欲しいと切実に思ったそうです。孫悟空の話のように、自分の毛を何本か抜いてフッとやると、自分の分身が現れればいいなァと夢想したとか・・・。そんな願いが経営者感覚を身につけたリーダーを育てる仕組みづくりとして結実したのです。


◆アメーバ経営とは

 アメーバ経営とは、会社を小さな組織に分割し、小さな組織ごとに独立採算制とするもの。小集団ごとに採算を細かく捉えることにより、誰にも分かりやすく、会社や部門の経営状態を把握できる仕組みなのです。
 アメーバ経営には3つの目的があります。
 第1は、市場に直結した部門別採算制度の確立。「売上を最大にし、経費を最小にする」という経営の基本原則を効率よく実践するために、マーケットの動向を反映した経営管理システムの確立と各部署の実践が肝心かなめとなります。
 第2は、経営者意識を持つ人材の育成。各アメーバのきめ細かな採算管理をリーダーに任せることにより、経営者としての意識を醸成させることができるのです。
 第3は、全員参加経営の実現。経営者と従業員が「経営理念」を共有し、家族のように理解し、一体感をもって協力しあう経営をめざします。


◆時間当たりの生産性を向上させる

 アメーバ経営の特質は、「時間当たり採算表」にみることができます。つまり、「1時間当たりの付加価値」という経営指標を重視するのです。「売上高」から「経費」を引くと「利益」になり、その利益を「総労働時間」で割ると「1時間当たりの付加価値」が出ます。この生産性を上げることがアメーバ経営の極意です。
 アメーバが予定どおりの利益を出すには、①売上高を増やす(注文を多く確保する)、②経費を減らす(ムダを省く)、③労働時間を減らす(作業効率を上げる)、という3つの方法しかありません。どの部門が稼ぎ、どの部門が効率が悪いか一目瞭然となるのです。


◆数値管理と経営者マインドの育成

 アメーバ経営は、精緻な管理会計制度でもあります。「管理会計」とは、経営情報をステークホルダー向けに開示するための「財務会計」や、納税のために行う「税務会計」とは異なり、経営者が経営実態を把握し、その意思決定や業績管理に活用するための会計手法です。
 アメーバ経営では、「時間当たり採算表」により、企業会計が分からない現場の社員でも、家計簿をつけるようなゲーム感覚で、売上やかかった経費が毎日分かり、いくら儲けたかを実感できます。このため、リーダーには、「自分も経営者の一人」という意識が芽生えます。責任感が生まれ、自分のアメーバの業績を良くしようと努力します。こうして、経営者意識をもつリーダーが育つのです。
 一方で、個の利益と全体の利益の対立をどう乗り越えるかも課題。だからこそ、自己中心的な行動に制約を加える経営哲学、フィロソフィーが必要になるのです。

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